危険な「新防衛計画大綱」―究極の解釈改憲による9条の空文化―

2010年11月 5日 みやざき9条の会 | お知らせ , 意見・感想 | コメント(0) | トラックバック(0)

みやざき九条の会及び宮崎県内の九条の会は、2010年11月20日(土) 講演会『新田原基地と日米安保を考える』を実施します。(宮崎中央公民館3階大研修室、10:00 ~ 12:30、資料代300円)

講師の一人、「さいと・こゆ平和委員会」瀬口 黎生さんの論説を掲載します。


危険な「新防衛計画大綱」―究極の解釈改憲による9条の空文化―

瀬口 黎生

1.その内容と問題点

 8月27日に首相の私的諮問機関の「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」が報告書を公表しました。これは年末に予定されている「新防衛計画大綱」のもとになるもので、民主党政府による初の外交・防衛政策ですが、従来の憲法の平和原則のふみにじり、「力には力」で対抗するという軍事力依存の色彩をつよめた、非常に危険な内容のものです。

 今、党首選で国民生活上急いで解決すべき課題をよそに、権力闘争に明け暮れています。その中で外交・防衛政策が大きな話題にならないのは、どちらが勝つても防衛問題については大きな変更がない証拠です。報告書の主な内容を見ますと、

 
a.基盤的防衛力の見直し

憲法九条の拡大解釈の積み重ねによって、専守防衛のための必要最小限の防衛力を持つとしてきた今までの考えも、もう役に立たないとしています。

 
b.非核三原則を決めておくことは必ずしも賢明ではない

アメリカとの核密約のもとで、「核の傘」の下にあるから、その手をあまり縛りたくない意図が見えます。

 
c.集団的自衛権の容認

憲法上行使できないとしてきた集団的自衛権の政策は日本自身の選択で変えることができるとしています。永年にわたる私たちの闘いを無化するものです。

 
d.武器輸出三原則

防衛生産・技術基盤など防衛産業は重要だから、武器禁輸政策は見直すことが必要としています。防衛力を支える基盤の整備という名目で、色あせた「パワー・ポリティックス(「力には力で」という軍事力均衡論)に基づいて、封印されてきた「死の商人」たちの復権をちらつかせています。

 この他にPKO参加五原則を修正することや、海外派兵恒久法の制定などにも言及しています。

 これらは半世紀にわたる自民党政権のもとで、なし崩しに九条の解釈を変えて、世界でも 有数の軍事力を持ってきている現状の上に、さらに政権交代を機に憲法の平和原則を一挙に変 更強化しようというものです。

コスモス

2.世界的平和の潮流と菅総理の広島大会での醜態

 今年の初めてパン・ギムン国連事務総長やイギリス・フランスなどの国家代表も参加し、アメリカ大使も出席した原水爆禁止広島世界大会で、菅総理は被爆国として平和を語りながら、その舌の乾かないうちに、「核の傘」は重要とも語り内外の多くの人々のひんしゅくを買いました。

 朝日新聞がこの「懇談会の報告」をすっぱ抜いて記事にしたのが、7月27日の朝刊ですから、おそらく菅総理は内容を踏まえていた上での発言だったと思われます。

 世界にはいま、国際平和へのゆるやかな、しかし大きなうねりの兆候があります。世界では軍事同盟の退潮が見られます。今残っているのはNATOと韓米と日米の軍事同盟しかありません。その全てに世界の警察を自認するアメリカがからんでいます。

これに代わって、南米やヨーロッパに見られるように、地域共同体形成の動きが顕著です。東南アジアでも世界最大の共同体形成への情況が見られはじめました。2009.4のプラハ演説でのオバマ米大統領が唯一核兵器を使用した核保有国としての道義的責任に言及して以来、あきらかに世界の国際平和への動きは加速されてきています。

8.6の原水禁広島大会への各国代表の参加もその表れです。一方ヨーロッパ諸国では財政の悪化もあって、武器、兵力を含む軍事費の削減が行われようとしていますし、アメリカですら5年間で1000億ドルの節約を国防長官が提起し、議会は10年で1兆ドルの削減を目指す提言が行われています。

 経済としてみても、拡大再生産につながらず、破壊しか生まない武器の生産が行き詰まりに行き着くことは当然のことです。

 原水爆禁止2010年世界大会・国際会議では、ニュージーランド英国海軍退役司令官のロバート・グリーン氏は核兵器を扱った経験をもとに、7点にわたって核抑止力の無効を表明しています。(平和新聞1933号から)次に列挙してみましょう。

  1. 核兵器は究極のテロ装置である
  2. 核抑止力は国家による核テロリズムである
  3. テロリストは核兵器では抑止できない
  4. 核抑止力は信頼できない。核報復能力を持つものには核で威嚇できない
  5. 核抑止力は安全を損なう。安全は他の安全を脅かすことでは得られない
  6. 拡大抑止は効果がなく、非生産的。アメリカの軍事同盟と海外基地の維持には役にたってきたが、核戦場になる危険をともなう
  7. 核抑止力は国際人道法に違反する
  

この軍事専門家の発言は冷戦終結以後の紛争の歴史が一部の例外を除くと、国家間の武力衝突という形をとらない常識をふまえたものです。

  

「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」の報告書が、ことさらに北朝鮮や中国の脅威を強調するのは,明らかに上記したような世界の潮流とはかけはなれています。新防衛計画は民主党政権に採っては初の計画です。日米安保を基軸とした同盟の深化という対米従属路線は日本の国家としての主権を放棄した、今までに例のない危険なものです。

これでは憲法前文がかかげた「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意し、......全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する」という理想も、憲法九条の一項と二項の実質も全く死文化し、絵に描いた餅になってしまいます。

これらはニュースの表面からはことさら消されていて、国民の目に見えにくくなっています。日々の暮らしの窮乏にかまけているうちに、取り返しのつかない場所に連れ去られようとしています。

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